第2章(コラム)庶民院議員の家庭生活

長期連載:日本化するイギリス政治、イギリス化する日本政治*1


目次
序章:日本人初の英国与党党本部での経験を勝ち取るまで
第1章:イギリス与党保守党本部から見たイギリスの政府・与党
第2章:イギリス議会から見たイギリスの首相と国会議員
 (コラム)「ブツブツうるさいバカ」という首相の失言で幕を開けた議員秘書生活
 (1)バックベンチャーという哀しい響き
 (2)有権者からの陳情対応では政府との中立性を保つ
 (3)庶民院議員は週に1日半を地元で過ごす
 (コラム)庶民院議員の家庭生活
第3章:ロンドン市長選挙対策本部から見たイギリスの選挙
第4章:イギリス政治のインサイダーから見た2015年総選挙
第5章:ロンドン大学政治経済学院(LSE)から見た日英政治比較
終章:日本化するイギリス政治、イギリス化する日本政治

本文
 当時、リース・モグ議員には4人の子どもがいた。4人の子どものうち上の3人の子どもはロンドンの学校に通っており、日曜の夜に議員は3人の子どもを連れてロンドンまで移動して、木曜日の夜に議員は一人で地元に戻っていた。奥さんと末っ子は月曜日にロンドンに移動して、奥さんが金曜日の午後に子ども全員を連れて地元に戻っていた。このようなライフスタイルは他の議員にとっても一般的なことのようで、議会が開会している月曜日から木曜日はロンドンの議会での活動に、金曜日から土曜の半日くらいは地元での活動に時間が費やすことが多いようだ。

 そのため、通常は週末も含めて家族とゆっくり過ごす時間がなかなかとれない。しかしながら、議員として忙しい日常を過ごしながらも、イギリス人らしく、長期のバケーションは欠かさないということだった。イギリスでは、7月の第4週くらいから9月いっぱいくらいまでの2か月ほど、議会が休会(recess)となる。リース・モグ議員は、夏は3週間ほどニューヨーク州北部にある親戚の自宅でバケーションを取る一方で、冬も数週間ほど地元でバケーションを楽しむ生活をしているということだった。バケーションの間も、自分のオフィスとは1日に15分ほど電話やメールでやりとりをしているようだ。他の保守党所属議員の話でも、この休会中に一か月ほど完全に家族だけで過ごすようにしているとのことだった。バケーション中の夏の一か月の間は、議員である自分のことを知っている人があまりいないであろう土地に行き、のんびりと過ごすとのことだった。

 また、親である自分が政治家であるということが、子どもにとって苦にならないよう、なるべく地元外の学校に子どもを通わせるなど、努力をしていると語っていた議員もいた。庶民院議員は日本の国会議員と比べると、その給料は非常に低く、子どもを地域外の学校に通わせる教育費など、家計には苦労しているということだった。

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2015年に3年ぶりにリース・モグ議員を訪ねた際の写真

*1:本連載に記載の事実や認識は、個別に示されたものを除き、2015年9月時点のものである。