国際的NGOの訪問

先週の金曜日に、ある国際的なNGOが保守党調査部を訪れ、ミーティングを開いてくれました。彼の話した中身もさることながら、そういったNGOの活動そのものが、なかなか面白かったので、メモを残しておきたいと思います。

まず、彼の所属しているNGOですが、国際的なNGOなので、彼らの取り組む課題を世界全体で改善する活動と、イギリス国内で改善する活動の2つがあります。今回の彼の訪問は後者のイギリス国内での活動の一貫です。彼は後者の活動を推進するグループで、External Relationsを担当しており、その仕事として政治へのロビイング活動をしています。彼は主な対象官庁の大臣のスタッフとも日頃から接触があり、ロビイングの活動としては、当然ながらそちらがメインになります。保守党(恐らく自由民主党労働党でも同じ事をしていると思います)でのミーティングは、あくまでもお互いの情報交換が主な目的で、政策への影響は間接的なものとなります。

ミーティングの参加者は調査部のスタッフのうち都合のつく10人程度です。それぞれ担当の官庁があるため、まずはその紹介をします。このNGOの活動内容に関連する省庁は、主要なものがいくつかありますが、その他の省庁にも多かれ少なかれ関連があります。一通り自己紹介が終わったところで、彼が主な2つの活動領域について、そのNGOから見て政府の方針をサポートしているところ、サポートしていないところを話しました。コミュニケーション能力が非常に高く、持ち上げるところは持ち上げつつ、反対の部分についても、こちらの気分を害さず、でも、明確に所属するNGOの主張を提示して、政策の再考も促します。

その上で、彼らが今後企画しているキャンペーンについても、そのキャンペーンの概要とタイミングをこちらに教えてくれました。これは、このようなキャンペーンを直前まで秘密にしておくと、もちろん不意打ちの効果はあるのだと思いますが、一方で、大きなキャンペーンを秘密のまま準備することも難しいですし、不意打ちのようなことをして関係をこじらせるとその後のロビイングもままならない、という考えがあるのでしょう。連立政権の方針と概ね合致するものと、そうではないもの、両方がありますが、そのそれぞれを共有した上で、建設的な関係を構築したいとの意図を感じました。

面白かったのは、「連立政権の方針をサポートしている」として話していた政策領域について、大きな方向性を支持した上で、それとは矛盾しない課題も提起して、「これなどは2015年の選挙の際のマニフェストで訴えるのによいネタかもしれない」と話していたことでした。なかなかちゃっかりしています。これを聞いて、「この人は労働党ではどんなことを話しているんだろう」とちょっと考えました。ミーティングの後で、他のスタッフとも話しましたが、恐らく、話している内容は同じだと思います。それこそ、賛成のことも反対のことも話しているので、特に使い分ける必要はありません。一方で、ニュアンスはかなり異なり、連立政権に反対の領域については、労働党スタッフに、政権を今すぐ攻撃するネタとして、話をしているのだと思います。

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連立政権が実行している財政削減により、NGO/NPOへの補助金がカットされ、保守党がマニフェストで掲げたBig Societyという、より大きな市民社会による小さな政府の実現、というコンセプトに矛盾するのではないか、と労働党およびその支持者から攻撃されることがあります。それに関連して、このミーティングの質疑応答の中で、一人のスタッフがNGOの職員に、「こういうことが言われていますが、実際に、そちらのNGOではいかがですか。活動に影響が出ているのか、それとも、他の収入源で埋め合わせができているのか」と聞いてみました。ところが返事は、「もともと政府からの補助金は一切もらっていないからポジティブにもネガティブにも影響はない…」というもので、あまり参考にはなりませんでした…。