先ほどなんとなくYahoo! Japanをみていたら、他人の「顔」を勝手に撮影・アップして中傷する大学生のブログが炎上していることを知りました。公共の場所とはいえ、食事をしている私人を盗撮して、公開の場で中傷することはよくありませんね。一方で、この私のブログのストーリーに現れる主人公の政治家の方々は、ビデオや写真をとられることを前提として仕事をされています。その際たる場所が議会の中であり、その議論の様子はリアルタイムに放送されており、議論の中身もさることながら、顔の強さ・弱さも見ている人たちに大きな印象を残します。

イギリスでは毎週水曜日の正午から30分間、Prime Minister’s Question Timeという日本の党首討論のモデルになっとされる、首相に対する議会での公開の質問時間があります。質問者は野党党首には限りません。この様子は当然ながらBBCでリアルタイムで放送されています。今週の放送も今はまだBBC iPlayerでご覧になれるので、ぜひクリップの2分6秒くらいから11分20秒くらいまでの、野党労働党ミリバンド党首とキャメロン首相の議論をご覧ください。この日は、イギリスで現在問題となっている入国管理規制をトピックとして議論がなされました。

入国管理はHome Office (内務省) の管理の下で、UK Border Agencyが実務を担っています。この夏にその規制の一部を実験的に(パイロットとして)変更して、よりリスクの高いプロファイルの人にフォーカスして入国審査を行う、ということが実施されました。その中でUKBAの局長がHome Officeの大臣であるTheresa May大臣の承認範囲 (ministerial approval) を超えて、現場で入国審査の緩和を承認してしまったということで、何千人かの不当な入国があったのではないかということが問題になっています。したがって、この日の党首討論の放送では、キャメロン首相、ミリバンド党首に加えて、メイ内務相(キャメロン首相の隣の隣に座っている白い服を着た女性)とクーパー影の内務相(ミリバンド党首の隣に座っている青い服を着た女性)の合計4人の「顔」がよく映されております。キャメロン首相の反撃を受けた際のミリバンド党首の「顔」、ミリバンド党首の追及を受けた直後のメイ内務相の「顔」、キャメロン首相がメイ内務相を擁護している時のメイ内務相の「顔」、ミリバンド党首の議論を聞いている際のキャメロン首相の「顔」、ミリバンド党首が政権を攻撃している時のクーパー影の内務相の「顔」、どの「顔」が強いものであり、弱いものであったのか、その判断は皆さん次第ですが、やはり「顔」の表情というものは、その時々の心理状態をなかなか隠すことができません。議事録には残らない映像の強さを感じます。

国際会議のサポート

木曜日と金曜日は以前インターンをしていた国際局の仕事のお手伝いをしていました。以前にもご紹介したInternational Democrat Unionという各国の中道右派政党の国際的なネットワークが、Leaders Meetingという、2~3年に一度の総会のような会議を開催しました。それが水曜日の夜から金曜日のお昼まででした。その後、金曜日の午後から土曜日まで、Alliance of European Conservatives and Reformists という欧州議会の政党のカンファレンスがありました。欧州議会にはもう1つ保守系の政党としてEuropean People’s Partyがありますが、前者がどちらかというといわゆる欧州懐疑派で統合に消極的なのに対して、後者がそれにより積極的です。英国保守党は前者の所属です。

まず、IDU Leaders Meetingですが、参加者は主に各政党の国際局長の議員および国政局の政党スタッフの部長ですが、政党によっては首相・大統領や大臣が参加している場合もあります。主にヨーロッパの政党がメンバーですが、各大陸から参加政党があり、30を超える政党の参加がありました。東アジアからは韓国のハンナラ党と台湾の国民党 (KMT) が参加しています。日本の中道右派政党とされている自由民主党は、IDUスタッフの話によると、90年代の終わりごろまではメンバー政党だったとのことですが、既に離脱しているということです。IDUのスタッフも、なんとかまた自由民主党との関わりを増やしていくにはどうしたらよいのか、と頭を悩ませていました。

今年はロンドンでの開催ということで、IDUの事務局と保守党の国際局が、主にその運営を取り仕切っておりました。私は会議当日だけのヘルプということもあり、やっていたことは、こういった大きな会議で細々と発生する雑務を想像してもらえれば、その通りだと思います。ただ、そういった雑務が発生しない間は、実際になかの会議場に入って、議論を聞くことができ、非常に参考になりました。私が聞くことができた時間には、具体的な政策トピックについての各国での政策事例の紹介とそれに対する質疑応答や、いくつかの国のレポートなどがありました。木曜日は朝からこういった形で会議が続き、夕方頃に会議場にイギリスのヘイグ外相が到着してスピーチ・質疑応答が行われました。その後、会場のホテルから首相官邸に移りレセプション、またホテルに戻りディナーという日程でした。

ディナーには私は参加しないものと思っていましたが、各政党の代表者のテーブルのそれぞれに、運営側スタッフの席もそれぞれポツンと用意してくださってあります。「下っ端はそこらへんで弁当でも食ってろ」という発想はイギリス人にはないのかもしれません。心細いながらもがんばって過ごしました。その時の私の心理状況は「顔」に表れていたかもしれませんが…。私のテーブルにはIYDUというIDUの青年組織のDeputy Chairmanの女性、オーストラリアからの参加者、ペルーからの参加者などがいらっしゃっていました。ディナーのスピーチは英国のマイケル・ゴーブ (Michael Gove) 教育相で、BBCでの勤務歴もあり、「私はキャメロン首相ほど見た目は良くないが」と冗談も交えて、非常に雄弁なスピーチをされていました。ディナーの終わりには、IDUの現在の会長であり、元オーストラリア首相 (在任期間: 1996年から2007年) のジョン・ハワード (John Howard) 氏が各テーブルを回っていらっしゃいました。

また、会議の全体を通して、韓国ハンナラ党の方々、台湾(中華民国)国民党の方々とも、何度かお話をさせていただきました。先方から見れば、政党の代表者にしては若すぎるけれども、東洋人の顔で保守党スタッフというイメージもしっくりこない、不思議な人間が混ざっているということで声をかけてくれたのでしょう。「日本人なんですが、こちらの保守党で働いています」というと、やや戸惑っているようでしたが、同じ東洋人ということで、何度も声をかけてくれたのは嬉しいことです。また、台湾からは国民党だけではなく、駐英国台北代表處という、恐らくde factoの駐英大使館だと思うのですが、そこからも人が来ていました。その方はかなりシニアな方だと思うのですが、私の両親が台湾出身だと分かると、台湾で育った人に特有の、非常に人なつっこい「笑顔」を見せて私に連絡先をくれました。その後も何度か私を見かけるたびにその「笑顔」を見せてくれて、忙しさとプレッシャーに見舞われていた私に、心温まる瞬間を何度も与えてくれました。

木曜日はそのまま一部の方々と、最後は保守党国際部のボスとスタッフ数名で、遅くまで飲み続けました。金曜日も場所を変えて会議が続けられ、IDUの次期執行部の推薦・承認や、引き続き各国からのレポートなどがあり、会議の終わりにはキャメロン首相のスピーチがありました。私は残念ながらこのタイミングは会議場の外ですることがあり、スピーチを聞くことはできませんでした。

そうこうしてIDU Leaders Meetingは無事に幕を閉じ、会場の後片付けをすると、今度はAECRのカンファレンスがあるということで、慌ただしく、次の会場に移動しました。ただ、こちらは、AECRのスタッフが主催ということで、保守党国際部の仕事はあまりなさそうでした。ボスは相変わらず忙しそうに、皆さんとコミュニケーションを図っていますが、私は特にすることもないので会議場に入って議論を聞いて、この日の仕事を終えました。

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さて、もしかしたら、これを読んでいただいている方は、1つ疑問に思っていることがあるかもしれません。私が首相官邸でのレセプションにも入れたのか、、、ということを。10 Downing Streetという住所で形容される英国の首相官邸については、先日のエントリでもYouTube動画をご紹介しました。木曜日のホテル会場から首相官邸に向かう一行のナビをしていた私は、自分が入れるワケがない、と思っていたので官邸の門のところにあるセキュリティ・チェックまで一行を案内した後、一緒にナビをしていた議員秘書と共に脇で待っていました。二人で「自分たちはホテルで待ってればいいのかね?」的なことを話しつつ、でも、「せっかくだから、並んでみよう(笑)」と最後尾に並びました。セキュリティ・チェックではレセプションの招待状と身分証の確認を行なっていて、その横には、保守党国際部のスタッフが名簿との照合をしています。招待客全員がチェックを終えて中に入ると、国際部のスタッフが議員秘書と私を指して、「彼らは一緒に働いているスタッフよ」とセキュリティ担当者に告げ、我々が身分証を見せると、なんと中に入れることに…!セキュリティ・チェックを通り抜けてしばらく歩くと、首相の記者会見でもよく目にする、”10”という住所番号がついた、あの黒いドアが目の前にありました。そして、数日前にYouTube動画で見たあの黄色い壁の階段を上り、レセプション会場に入りました。私はワインを飲みつつノルウェイやその他の国の代表者とお話をしていると、やがて、キャメロン首相が現れて、一言ずついろんな人に挨拶をして、短いスピーチがありました。合計1時間強の時間だったと思いますが、私にとっては、忘れることのできない思い出になりそうです。官邸をでたところで、各国の政党の人があの黒いドアをバックに記念写真をとってもらっています。普段は自分の写真を撮ってほしいなどとお願いすることはめったにない私ですが、この時ばかりは、IDUのスタッフにお願いして携帯で写真をとってもらいました。ミーハーな私のふやけ「顔」なので、ブログにはアップしませんが(笑)。