抵抗勢力との戦い

久しぶりに自分の仕事の内容です。今週の仕事のうち、調査部での仕事の一部が伝わるような仕事を2つ、ご紹介したいと思います。一言でいうなら、抵抗への対抗。あくまでも「政党内」の調査部ということで、イギリスの民主主義の中で、政府やシンクタンクとは違った役割を担っていることが垣間見えるかと思います。

1つ目は政権のある政策に対するネガティブ・キャンペーンについてです。現在の連立政権では新しい政策を様々に打ち出していますが、財政再建の文脈の中で、歳出削減を伴う政策も数多くあります。歳出を削減するということは、財政が健全化するという文脈では「良い」ことです。他方、その歳出で無料のサービスを受けている人や、それを補助金もしくは売上として事業を営んでいる人から見れば、確実に「イヤ」ことであり、ある見方からすればそれは「悪い」こととも言えます。

今回の調査の背景となっている政策にも、その政策によって無料のサービスを受けている市民、政府のお金を売上として事業を営んでいる事業者がいます。そのお金の流れを変更しようとしているのが今回の政策変更であり、端的には、そのお金の流れが細くなると見込まれています。そして、その政策変更に対するネガティブ・キャンペーンが実施されています。

このネガティブ・キャペーンの目に見える目的は、「無料のサービスを受けている市民を守る」ことです。このネガティブ・キャンペーンの目に見えづらい目的は、「その業界の市場を確保する」ことです。前者と後者の目的のバランスは外からは分かりません。ただ、後者の目的が強いのではないかということは、このキャンペーンに関わる人たちの動き方や、彼らが特に気にしている部分でよく分かります。それで、この政策を推進するためのロジックとして、このキャンペーンの資金源や周辺のインタビューなどをしました。

2つ目は政権のある財政削減施策の抵抗勢力についてです。財政削減で使えるお金が減ることは多くの人がイヤがります。感情的にイヤなだけではなく、感情的にイヤなことを、「悪い」こととして訴えることもできます。上でもちょっと触れたように、政策を評価する基準はあまりにもたくさんあるので、評価がネガティブになる部分をとりあげて、理論武装することは比較的簡単だからです。

それで、件の財政削減施策にも、抵抗勢力がいます。いろんな理由をつけて、「できない」と抵抗します。我々としては、「いろんな価値判断はありえるけれど、この部分は無駄のはず」として施策を推し進めています。したがって、抵抗に対する打ち手として、そこにどれだけの無駄が存在しているかを、客観指標や事例を探します。これがまた、やってみると、いろいろと出てきます。こんなにムダ使いしておきながら、よくここまで抵抗できるな…と思えるものも出てきます。

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そんなこんなで調べた内容が、メディア向けの党のプレスリリースで使われたり、政権の議会答弁で使われたり、政権内議員のメディア露出で使われたりします。抵抗への対抗、そんな仕事でした。