国立国会図書館の保守党に関するレポート

先日、Constitution of the Conservative Party(保守党規約集*1)をネット上で探していたのですが見つからなかったので、保守党の担当の方にご相談して、1998年の最初の規約集から、直近の2009年に改定されたバージョンまでを一式いただきました。紙の形式などではどこかで公に手に入るはずです。また、それ以前の保守党の古い資料は保守党アーカイブとして、オックスフォード大学にある図書館に保存されています。保守党規約集は70ページほどにわたって、党のメンバーシップや、Board of The Conservative Party(保守党評議会)、Constituency Association(政党支部)などの規則が書かれているものです。参考までに、労働党の規約集自由民主党の規約集をリンクしておきます。ちなみに、上記の保守党アーカイブのウェブサイトには、過去の保守党の選挙ポスターが掲載されています。アメリカはもっとそうだと思いますが、(ここには労働党のポスターはありませんが傾向は同じであり、)英国政治が近年、かなり露骨にadversarialな(敵対的な)姿勢となってきていることが分かります。

さて、この保守党の規約集がネット上にないかと思って探していた時に、日本の国立国会図書館の、保守党に関するレポートを発見しました。昨年の12月に「レファレンス」という雑誌(?)で「英国の政治システムとその変容」として特集されました。その記事の1つが「英国保守党の組織と党内ガバナンス−キャメロン党首下の保守党を中心に−」という記事になっています。その記事を読んでみたのですが、これがさすがは日本の国会図書館で、公になっている資料を元に、保守党の組織について、大切なポイントが分かりやすくまとまっています。私のブログに書いてあるような話も、この記事で書かれている知識と併せて読んでいただくと、よいかもしれません。それにしても、6ページ目にある、保守党の組織図がなかなかにして秀逸です。ぐちゃぐちゃで、何が書いてあるのか、よく分かりません(笑)。著者の方の努力でなんとか「図」になっていますが、政党の組織が、いかに複雑かというのが一目瞭然です。

この記事の中では私の働いている保守党調査部(記事では保守党調査局と訳されています)についても、その概要と調査部から議員や政府の要職に就いた方々が触れられています。自分が現在働いている場所について、外部からの調査内容を読む、というのはなかなか不思議な気分です。各国の政府で働いている方々は、さぞかし、日々「不思議な気分」を感じていることでしょう。逆にそれが「日常」になっているかもしれませんが。

また、保守党とは関係ありませんが、記事の一部にこんな既述があります。

それでもなお、与党時の労働党党首と比較するとその(与党時の保守党党首の)地位は脆弱である。与党時の労働党党首への挑戦は、臨時党首選挙の実施という形で行われる。臨時党首選挙の場合、反党首側は、「反党首」で一致し得たとしても、選挙で現職党首の得票を上回るよう候補者を調整しなければならない。さらに、この臨時党首選挙の実施は、党大会において過半数の要求があったときのみとされ、また、立候補には下院議員の20%の推薦人が必要とな る。 このような手続に比べると、保守党における党首不信任案の可決のハードルは低いと言えよう。

2007年から2010年の労働党ブラウン政権は支持率が低迷しましたが、それでも、ブラウン首相を首相から引きずりおろして総選挙、とはなりませんでした。「英国人は自分が選んだリーダーにこだわる/責任を持つ」という文化論もありますが、上記のような制度論もその背景にあるのでしょう。制度が文化に与える影響も、文化が制度に与える影響もあり、社会的なケーススタディでは、両方(と可能ならその相互の関係を)を理解することが大切だと思います。

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同じ著者の方がイギリスの二大政党の党首の選出方法についての記事も書いています。私が修士論文を書いていた際に調べた項目でもあるので、次回(もしくは、そのうち…)、こちらも取り上げたいと思います。

*1:憲法」と訳すとやや仰々しいかなと思って「規約集」としましたが、適訳が分かりません。