ヨーロッパ

ご存知かと思いますが、今、ヨーロッパが揺れています。世界政治の七不思議の1つとも言われる、なぜか生き残り続けるベルルスコーニ・イタリア首相でさえ、ついに辞任するのではないかと言われるくらい、揺れています。イギリス人が「ヨーロッパ」という時はたいてい大陸ヨーロッパを指していて、自分たちはヨーロッパの一員だとは認識していないようですが、「ヨーロッパ」の通貨ユーロの影響で、イギリスも揺れています。それが先日のEUレファレンダムにもつながっています。

火曜日と水曜日の仕事

ヨーロッパが揺れていようともこの日の私の仕事はイギリス国内の調査です。月曜日にした分析の仕事について、分析結果は既述の通り明るいものだったのですが、政府がそれをどう実現しているのかを例示するメディア記事がないか、探してみようということになりました。探してみてすぐに、ほぼ、そういうものは存在しないと分かりました。そこで仕方がないので、分析をさらに深堀して、より細かくどこの数字がどう変化して、全体として良い方向に変化したのかを調べることにしました。こうして詳しく数字を追うことで、「どうやって」実現したのかというのが、「○○を増やした/減らした」もしくは「○○を××に変えた」結果「○○が改善した」などと、因果関係についてだいたいの「見当」がつきます。ただ、厳密な意味での因果関係はよく分からないので、その「見当」をもとに、政府の人に聞いてみる事で、「数字」と「現実」が結びつきストーリーになります。実際に一段掘り下げて分析してみると、対象エリアごとに明らかな傾向が見えたので、それに基づいて分析をまとめました。

その後、特にすることがなく、ぼーっとしていたら、違う仕事がきました。次の仕事は月曜日の最初の仕事のように、雑用なんですが理解が深まる、タイプの仕事でした。具体的には、労働党のある影の大臣の、担当政策領域における、これまでの議会本会議や委員会などでの発言内容をひたすら集める作業です。影の大臣というのは、日本でもおなじみになっているのでご存知だと思いますが、実際の大臣を追求する野党側の代表です。ただちょっと違うのは、イギリスの場合は、影の首相、影の大臣というのはれっきとした公職であり、議会での論戦は実際に大臣と影の大臣を中心に進められることでしょうか。私の作業の目的は想像できるかもしれませんが、保守党政権の大臣が、当の影の大臣とやり合うための準備です。過去の発言を分析することで、どんな攻撃をしてくるかもある程度分かりますし、逆に、相手側の発言の非一貫性を見つけることもできます。それで、これをどうやって集めるかというと、日本にも同じようなものがあるのかどうか分かりませんが、イギリスにはThey Work For Youという便利なサイトがあり、ここに議会の公式議事録 (hansard) や個々の議員の議会での投票行動などが、見やすくかつ検索しやすい形で転載されています。したがって、このサイトでキーワードとその議員の名前から検索をして、ヒットしたものの中から選んでいくことになります。ただ、私にとってつらかったのは、そのヒット数がとんでもなく大きかったことです…。結局、火曜日の残りと水曜日の全日をこの作業に費やしました。まだまだたくさん残っていますが、いったん、ここで打ち止めにしました。

この作業がややつらいものであるのは想像に難くないと思いますが、一方で、つらい思いだけしているのもなんなので、またいろいろと中身を読みながら仕事をしました。すると、対象の政策領域でどんなことが問題になっているのか、どんな政治的な揚げ足とりな議論が行われているのか、公な場で大臣が議員に対応しなければいけない場面(議会本会議など)には何があるのか、などいろんなことが少しずつわかりました。特に最後の議会/国会の運営方法に関わる部分は、一般性のある分野でありながら、まだまだ私の勉強が足りていないところなので、非常に勉強になりました。

火曜日の夜

ヨーロッパがあまりにも揺れているのでアジアに目を向けてみます。というのは冗談ですが、アジアの未来のリーダーを目指す人たちのためのネットワーキングを主な目的として、イギリス人の友人がFuture Leaders in Asia Group(FLAG)というNGOを立ち上げました。嬉しいことに彼が私にも声をかけてくれたので、私もその一員として微力ながらお手伝いをしています。このNGOの最初のイベントがこの日の夜でした。イベントの詳細はこちらに掲載されていますが、平たく言うと、アジアとゆかりのあるエライ方々にパネルディスカッションをしていただいて、その後に、飲んだり食べたりしながら交流する、というものです。イギリス人もアジア人も含めて80人以上の社会人・学生が集い、豪華な顔ぶれのパネルディスカッションも盛り上がり、大盛況のうちに最初のイベントが終わりました。これから継続的にイベントを開催していくことになりますのでご興味ある方はぜひご参加下さい。

EUレファレンダムの続報

BBCによると、月曜日に行われたEUレファレンダムに関する動議では、結果的には307人の保守党下院議員のうち、81人が造反したとのことです。しかし、予想されていたように、最大野党の労働党も現時点でのレファレンダムには反対の票を投じたため、全体としては政府の方針通りの結果となりました。ガーディアン紙(労働党よりの高級紙の1つ)の世論調査によると、70%の有権者国民投票を望んでおり、仮に国民投票が実施された場合には49%の人がEUの撤退を支持する投票をしていた、と報じています。イギリス国内も含めて、各国メディアがこの大規模な造反劇を取り上げて、キャメロン首相の求心力低下と大きく報じました。The Daily Telegraph紙によると"Iain Duncan Smith has threatened to quit the Government if David Cameron ever again tries to force him to vote against his Eurosceptic principles" すなわち、「(拙訳)(重要閣僚の1人である)イアン・ダンカン・スミスは『自分のヨーロッパ懐疑派としての原則に反して投票を行うよう、首相がもう一度でも強制するなら、自分は政府から去る』と脅した」とのことで、確かにこれは首相にとっても一大事です。

ここでの造反議員および労働党の投票行動の説明をしたいと思ったのですが、ちょっと分からないことがあり、まだきちんと説明できません。調べてみて分かったら、日を改めて書きたいと思います。

ラジオ・プログラム

ちなみに、イギリス政治の公開情報としては、私はToday in Parliamentというラジオ・プログラムを、なるべく毎日、通勤電車の中で聞くようにしています。月曜日のEUレファレンダムをめぐる、首相や外相などの政府側の議員と、造反議員側の議論の様子もこちらの10月24日の放送分で紹介されています。EU懐疑派の議員が ”(レファレンダムが) if not now…, when??” とドスのきいた一言で迫るのもイギリスらしいですね。

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ヨーロッパに気を取られすぎて、ロンドンの大事なことを書き忘れていました!来年の5月に再選を目指すボリス・ジョンソンロンドン市長が、火曜日に保守党本部を訪れました。どういった規模で保守党本部としてこの活動を支援するのか私にはまだよくわかりませんが、市長が1人1人職員をあいさつしてまわっていたので、私も握手してもらえました(笑)。その後、保守党本部の全員に向けて、彼の再選に向けた意気込みを15分ほどプレゼンテーションされました。噂どおりの非常に面白い方でプレゼンテーションは終始笑いに包まれていました。